陸上養殖と海上養殖の違い

shallow focus photo of pink and brown jellyfish 陸上養殖の基本
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陸上養殖と通常の養殖(一般的には海洋養殖河川・湖沼での養殖を指します)には、環境や管理方法、コストなどにおいていくつかの大きな違いがあります。それぞれの特徴をわかりやすく比較してみましょう。

1. 場所と環境

  • 陸上養殖: 陸上に設置された人工的な水槽やタンク内で行われます。養殖施設内で水質、温度、酸素などの条件を完全に管理します。海や川の自然環境に依存せず、都市部や内陸部などどこでも設置可能です。
  • 通常の養殖(海洋や河川での養殖): 海や湖、河川の自然な水域にネットやカゴを設置して、魚を育てます。自然の潮流や水質に依存し、海洋の影響を強く受けるため、場所は海や川に近いところに限定されます。

2. 水質と環境管理

  • 陸上養殖: 水は循環型のシステムで管理され、水質や温度を常にモニタリングします。養殖業者が水質や酸素レベルを人工的に調整することで、魚の健康を保つことができます。水の使用量は少ないですが、ろ過や浄化システムを維持するコストがかかります。
  • 通常の養殖: 自然の水質に依存しており、潮流や水温、栄養の変化を管理することはできません。外部環境の影響を受けやすく、水質汚染や温度変動、病気のリスクが高まります。

3. 環境への影響

  • 陸上養殖: 陸上で行われるため、排水や廃棄物が周囲の水域に流れ込むことは少なく、環境への直接的な影響を抑えることができます。水質を管理できるため、養殖に使用する水の再利用が可能です。環境への負荷が少ないとされています。
  • 通常の養殖: 魚の糞や未消化の餌が海や川に流れ込み、水質汚染の原因となることがあります。また、逃げ出した養殖魚が天然の生態系に影響を与えることも懸念されています。

4. 魚の健康管理

  • 陸上養殖: 水質や酸素レベルが常に管理されているため、魚がストレスを受けにくく、病気のリスクも比較的低くなります。養殖場での病気や寄生虫の発生を防ぎやすく、必要に応じて薬品の使用をコントロールできます。
  • 通常の養殖: 自然環境に依存しているため、外部からの病気や寄生虫のリスクが高くなります。特に、大量の魚が密集して飼育されることで、病気が広がりやすくなります。また、治療のために薬品や抗生物質が使用されることもあります。

5. コスト

  • 陸上養殖: 初期の設備投資が大きいです。水槽や循環システム、ろ過装置、温度管理装置など、陸上での養殖には高度な技術が必要となるため、初期コストとランニングコストが高くなる傾向があります。しかし、効率的な管理により、生産性が高まる可能性があります。
  • 通常の養殖: 自然の海や川を利用するため、初期投資は比較的低いです。ただし、自然の変動に左右されやすく、天候や水質の変化があると生産に影響が出る可能性があります。

6. 場所の選択肢とスケーラビリティ

  • 陸上養殖: 陸上養殖は、場所の選択肢が広く、内陸部や都市部でも行うことが可能です。また、施設を拡張することで、スケールアップも比較的容易です。消費地の近くで生産することができるため、輸送コストを抑えたり、魚の鮮度を高く保つことができます。
  • 通常の養殖: 海や川など自然の水域に依存するため、養殖の場所は限られています。また、施設の拡大が必要な場合、場所が確保できないこともあります。

7. 魚の種類と養殖効率

  • 陸上養殖: 水質や温度を制御できるため、異なる気候や環境に適応する魚を養殖することが可能です。これにより、養殖可能な魚種が増え、高価な魚や特定の環境が必要な魚も陸上で飼育できます。
  • 通常の養殖: 自然環境に合わせて魚種を選ぶ必要があり、養殖できる種類が限られます。特に、寒暖差や潮流などが養殖に影響を与えるため、特定の地域に適した魚種しか飼育できないことがあります。

まとめ

項目陸上養殖通常の養殖(海洋・河川)
場所陸上に設置された水槽やタンク海や川、湖沼の自然水域
水質管理人工的に管理、循環システムを使用自然の水質に依存
環境への影響環境への影響が少ない汚染や生態系への影響が懸念される
魚の健康管理水質管理が行き届き、病気のリスクが低い病気や寄生虫のリスクが高く、抗生物質の使用もある
コスト初期投資が大きいが、効率的初期投資が少ないが、自然の変動に影響されやすい
スケーラビリティ場所の選択肢が広く、拡張しやすい海や川に依存するため、場所が限られる
魚の種類環境制御により多様な魚種が養殖可能自然環境に適応する魚種のみ

陸上養殖は、環境負荷の低減や安定した管理が可能ですが、初期コストが高い点がデメリットです。通常の養殖は、自然環境に依存しているためコストは低いものの、環境リスクや自然条件の影響を受けやすい点が異なります。

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